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20132013 巨匠と呼ばれる地位と名声を得ても、一生涯にわたって個人の住宅を設計し続けたアメリカの建築家がいます。
その建築家の名は、ルイス・カーン(エストニア生まれ:1901-1974)。
コルビジェ、ライト、ミースという三大巨匠の影で控えめながら、「どんな建物も、家なのです」という信念のもと、大規模建築物であってもどこかに「家=部屋」を感じることができる数々の名建築を残したことでも知られています。

カーンは、73年間の人生のなかで50件近くもの住宅プロジェクトを手掛けていたそうです。
そのなかでも、ある小さな家が今でも私の心を離しません。
その家は、アメリカのフィラデルフィア郊外に1967年に竣工した小さな小さな家「フィッシャー邸」
私もまだ生まれていない時代に建った築45年の家。
もうそろそろ、「ビンテージ・ハウス」とでも呼べるかもしれませんね・・・。

そのフィッシャー邸を、死ぬまでに一度は訪れたいと思ってはいるものの、未だ叶わない夢となっています(苦笑)。
そして、この憧れの家を想いおこすとき、カーンが抱く家への理念を思い浮かべると、熱いものがこみ上げてくると同時に、とても幸せな気持ちになることができるのです。
それは、カーンと家の依頼主であるフィッシャー夫妻の双方が発した短いメッセージのなかにあります。

カーンからフィッシャー夫妻へのメッセージ
「(私は)ある特定の人にために家を設計するのではないのです。家というのは、依頼主だけでなく、別の人が住んだとしても、しっくりと感じられるように設計すべきです。その設計がフォームへの真の探求を体現したものであれば、一家族にためにつくられた家は、他の家族にとってもよき家となる特質をもっている(※)のです」
※これをカーンは「永遠の家」と呼んでいます。

フィッシャ―夫妻の回想録
「カーンと過ごした7年間、わたしたちはすばらしい建築の教育を受けたと思っています。そして、いまに残るのは、たいへん住みやすい無二の家と、愛情に満ちた、格別の友人と過ごした思い出です。そもそも私たちが期待していたのは、美術館やモニュメントではなく、自分たち家族だけにとって特別な家を建てることでした。(以後、省略)」

カーンは、様々な依頼主の家を設計しながらも、常に「永遠の家」を求め続けている。
その家の依頼主は、「自分たち家族だけにとって特別な家」を要望する。

こんな普通なら到底かみ合わない思想を両立させてしまうところが、4人目の巨匠とも呼ばれる所以ですね。
カーンとフィッシャー夫妻のような関係が築けるよう、「永遠の家」に一歩でも近づきたいと思っています。

福田 明伸/AKINOBU FUKUDA

※写真と一部文章は「ルイス・カーンの全住宅1940-1974/齋藤裕」より転写させて頂きました。