CONCEPT


コンセプト

住まいのコラム

⒊同じアイテムが1カ所に集まってなくてもいい、かも?

【暮らし・住まい方】

COLUMN No. 0017

こんにちは。フリーエディター&旅するブログの先生、「編集脳」アカデミー主宰の藤岡信代です。インテリア雑誌編集長時代は、さんざん収納を特集したのに、収納が苦手な私(苦笑)。その理由はなんだろう?片づけのプロに取材しながら、片づけられない理由を探っています。

第2回に続いて、今回も「食器の収納」がテーマ。兵庫県宝塚在住の暮らしのアドバイザー、土井けいこさんの食器収納をご紹介します。

 

食器は一括収納?分散収納?考えたことありますか?

前回は、「食器は食器棚にしまうもの」という思い込みから、「引き出しにしまったほうが便利」と考えが変わった、というお話を書いたのですが、もう一つ、食器収納で目ウロコ体験をしたことがあります。土井けいこ先生のお宅の食器収納を目にしたときです。

トップの画像は、土井先生宅のダイニングルームのコーナーにある背の高い食器棚(正確にはシステム収納家具)。棚ごとにしまう食器が分類されていて、とっても美しい。これだけなら目からウロコは落ちないのですが(笑)、土井先生宅にはもう一つ、食器収納があるのです。
それがこちら。

キッチンの中にもシステム収納棚があり、こちらにも食器が収納されています。
食器は食器棚に「全部しまうもの」という思い込みがあった……と、これまた気づかされました。


“たまに使うもの”はどこにしまってもいい

土井先生に、「食器収納をダイニングとキッチンに分けた理由」を伺ってみました。

「使用頻度が違うものは、分けて収納すると管理がしやすい。キッチンは作業が目的の空間です。日々使う食器とそれ以外のものが混ざっていては、日々使うものが出し入れしにくい。キッチンに収納する食器も道具も、できるだけ動く(使用頻度が高い)ものに限定するのがいいのです。

そのため、キッチンのオープン棚には日々使うものだけ収納。たとえば5枚ある器もキッチンには家族分だけ。ほかはダイニングの収納棚に。お正月用など使う場面が限定されているものは、キッチンからもダイニングからも離れた、クローゼットの奥にまとめて収納しています」」

土井けいこさん

 

来客用の食器やトレーは、むしろダイニングで使うことが多いもの

よく使う食器はキッチンの収納に、たまに使う食器や来客用はダイニングの収納に。土井先生の食器収納は、「使用頻度」によって分けられているのです。しかも、お正月用などの季節・行事のものは、キッチンやダイニングにすら置かない!

そもそも「同じアイテムは1カ所にまとめて置くもの」と思っていた私には、使用頻度で分けるという発想すらありませんでした。

土井先生が食器収納を分けるようになったのは、「既成の食器棚を持たなかったことが原点」なのだそう。30年以上前、当時、食器は最小限しか持たなかったので専用の収納家具は必要なかった、と言います。
その後、何回か引越しを経験したものの、ずっと食器棚は持たずにキッチンの調理台下の引出しに食器を収納。引出しに入らない大皿や来客時に使う食器は、自然に別の場所に収納することになり、「キッチンに食器類をまとめて収納する、という発想がなかった。その結果、使用頻度や大きさ、目的で分けて収納する使い勝手のよさ、管理のしやすさを身体で覚えたんだと思います」

「食器は食器棚にしまうもの」という思い込みが、土井先生にはなかったのですね。


収納で大事なことは、“管理できている”こと

使用頻度を考えて収納場所を決める。

この発想は、「ものを管理する」という発想にもつながります。土井先生の収納の考え方は、ものをしまうことが目的ではなく、気持ちよく使い、管理することが大事、というものです。そのため、食器収納も「使いながら管理する」という仕組みができています。

たとえば、ダイニングの収納棚は、扉の中に左右に7段の棚板があり、全部で14のスペースに分かれているのですが、土井先生は、ひと枠ずつ範囲を決めて点検をするそうです。

「点検は拭き掃除もかねて、ひと枠の食器を出して拭いて戻して3分ほどで完了。戻すときに、使っていない食器をはずして一番左下=【手放し候補】の枠に移します。左下が満杯になればそこだけ全部出して点検。実際の仕切りが頭の中の意識にも活かされているので点検がラクなんです」

土井けいこさん

 

ひと枠の中に、どんな食器を入れるか?(土井先生はそれを【くくり】と呼んでいます)も年々変わってきているそうです。

 

【好きなもの】を集めた棚

とても気に入っているのになかなか使うチャンスがない小さな土鍋やときどき使う大好きなフタものを一カ所に集めました。【好きなもの】のくくりを新設したんです。以前その【枠】に入っていたものは、ほかの【枠】に分散吸収。使用頻度や自分にとっての意味をチェックしながら、少しずつものが【枠】を移動、再編して、最後には手放す。これを繰り返して19年です」

土井けいこさん

 

 

 

すべてのものが一目で見渡せるのは、実は棚収納

ダイニングの収納棚の使い方を伺ううちに、私は、ある面白いことに気がつきました。扉つきのキャビネットなのに、土井先生は、それを視覚的にとらえているんです。

扉がついているので、ふつうは隠す収納って思いますよね?

「現在のダイニングの収納は、扉を閉めると四角い箱で中は見えません。だけど、扉を開けると収納の中全体が見えます。なんとなく扉を開けて眺めていることがたまにあります。開けたくなる収納です。

引き出し収納の便利さを知っているのになぜしなかったか?手持ちの家具の引き出しが深くて大きくて食器収納には向いていなかったこともありますが、「全体が見える収納」にしたかった。器の色、形、素材感が見える収納。これは管理と密接につながっている気がします。

理想、という感じではないのですが、器全体を見て愉しめて、管理もできるという点で、現在の収納はベターだと思っています」

土井けいこさん

 

引き出しは、その中のものは一目で見渡すことができますが、引き出し一つの単位でしか見ることができません。持っているものすべてを一度に見ることはできない。

棚収納は、扉つきであっても、扉を開きさえすれば中のものをすべて見ることができます。これは、「管理」という点では、とっても便利。もちろん、土井先生は、食器が重なって見にくい……ということがないように、しまい方にも一工夫。たとえば、腰の高さの棚にしまった豆皿などは、奥まで見えるように大きく空間を取っています。

前回は、私にとってのベストの食器収納は引き出し、と書いたのですが、どんな目的で、どんなふうに使いたいのか?それによってベストの収納方法はそれぞれ違うのだと実感しました。

最後に、土井先生がこの食器収納をどうプランしたのか?をご紹介します。

「19年前のことですが、阪神淡路大震災後3年かけてやっと見つけたのがいまの住まい。器を楽しむ暮らしを実現することが大きなテーマでした。そのテーマのもと制約を活かしながら具体策を考えました。

  • 手持ちの家具、システム棚(LBシリーズ)を活かすこと。
  • 好きな器を眺めて、触れて、使って、存分に愉しめる収納にすること。
  • オープン棚は離れて見たとき、器がインテリアの一部になること。
  • 扉収納は、開けたとき全体が見えること。
  • さらに、大きさ、質感、色など、バランスよく配置されていていること。

見た目のバランスだけでなく、棚ごとに使う目的や使う場面などで、大まかにグループ分けして、わかりやすい収納状態を考えました」

土井けいこさん

 

こういう暮らしがしたい。
だから、こんなものを持つ。
それを活かすために、収納を工夫する。

収納上手な人の共通点は、この発想のプロセスにあるような気がします。言い換えれば、「ものをしまうこと」をスタートにしない、ということです。


 

Fujioka Nobuyo

インテリアエディター

インテリア雑誌『PLUS1LIVING』ハウジング雑誌『はじめての家づくり』などの編集長を経て、現在では『編集脳アカデミー』主宰として住宅や編集に関するセミナーやコンサルティングを行う。