「パッシブハウス」と「パッシブデザイン」

どちらも「パッシブ」という言葉で混同されやすいのですが、それぞれ意味するものが異なります。そのため、おのずと目指す家の有り様も異なってきます。

■パッシブハウスとは

パッシブハウスとは、環境先進国であるドイツの物理学者ファイスト博士が導き出した「家の省エネ基準」です。その認定基準はとても厳しく、自然エネルギーを活用することはもちろん、建物自体の性能を徹底的に高める必要があります。
今ではファイスト博士が設立したパッシブハウス研究所によってそのノウハウは公開され、欧米を中心に世界で普及し始めています。

しかし、日本には日本の、欧米のは欧米の、その地域に相応しい建て方があるのも事実です。
実は日本には、日本の気候風土に適したパッシブハウスの認定や指導を行っているパッシブハウス・ジャパン（PHJ）という組織があります。弊社フクダ・ロングライフデザインもその会員です。

PHJでは、独パッシブハウス研究所がリリースした「PHPP」というツールによって、建物のエネルギー収支を詳細にシミレーションします。また「建もの燃費ナビ」では、一般の方にも設計段階の省エネ効果を示すことが可能になります。

※「PHPPツール」PHJ（パッシブハウス・ジャパン）のHPより転載

しかしながら、その高い認定基準のため、日本で認定を受けている住宅は未だ数える程でしかなく、現在私たちもパッシブハウス認定1号を目指し、取り組んでいる真っ最中です。

※「建もの燃費ナビ」PHJ（パッシブハウス・ジャパン）のHPより転載

■パッシブデザインとは

一方、パッシブデザインとは、パッシブハウスの考え方を一部取り入れ、自然エネルギーの活用よって快適な住環境を作ることに重きを置いた住宅の「設計手法に関する概念」です。それらは主に、断熱性能・日射遮蔽・自然風利用・昼光利用・日射熱利用といった5つの要素から成り立っています。
パッシブハウスのように燃費性能などの明確な基準は設けられていないため、パッシブデザインの恩恵はどれほどなのか？は、設計者や工務店の自主宣言となります。
そこで私たちは、パッシブデザインの効果を以下の様に定義しています。

▶自然室温
最寒日：15℃以上（朝6時の無暖房時の室温）
最暑日：33℃以下（午後15時の無冷房時の室温）

▶年間暖冷房負荷の弊社基準
180MJ／㎡・年以下
快適性を保つ室温（弊社基準：冬期20℃以上・夏期28℃以下）にするために、どのぐらいの暖冷房エネルギーを投入すれば良いのか？を計算するため根拠になります。

▶BEI（Building Energy Index）の弊社基準
BEI ≦ 0.55以下
設計された建物がどれだけエネルギーを効率良く使っているかを評価するためのもので、BEI値が低いほどその建物がエネルギー効率が良いことを示します。

建築の断熱性能を世界基準まで高め、超低燃費を実現するパッシブハウス。
ほどほどの建物性能で、ほどほどの低燃費性能を実現するパッシブデザイン。
同じ「パッシブ」でも目指すところは異なりますが、私たちはどちらのパッシブも明確な基準をもって取り組んでいます。