「ノーメンテ」という言葉について考える

2026年8月25日更新

こんにちは。

フクダ・ロングライフデザイン 設計の田中 桂です。

 

家づくりをしていると、「ノーメンテナンス」という言葉を目にすることがあります。

外壁はノーメンテ。
屋根はノーメンテ。
この材料なら、ほとんどお手入れはいりません。

家を建てたあとにできるだけお金がかからない、手間がかからないというのは、もちろん魅力的なことです。

ただ、私は「ノーメンテ」という言葉には、少し引っかかるところがあります。

そもそも、世の中に本当にメンテナンスが必要ないものは、ほとんど存在しないのではないでしょうか。

雨や風、紫外線にさらされる外壁や屋根。
毎日使うキッチンやお風呂、給湯器。
床や建具といった室内の材料。

どれだけ耐久性の高いものを選んでも、時間が経てば汚れたり、色が変わったり、部品が消耗したりします。

家も例外ではありません。

だから私たちが考えたいのは、

「メンテナンスをなくすこと」ではなく、
「どのようなメンテナンスなら、無理なく続けていけるのか」

ということです。

たとえば、十数年ごとに足場を組み、大きな費用をかけて全面的に補修しなければならないもの。

一方で、ときどき状態を確認し、傷んだところだけを直したり、塗ったり、交換したりしながら使い続けられるもの。

同じ「メンテナンスが必要な材料」でも、その内容は大きく違います。

私たちができるだけ避けたいのは、メンテナンスそのものではありません。

家を維持するための費用が大きくなりすぎたり、頻繁な修繕が暮らしの負担になったりすることです。

反対に、無垢の木に少し傷がついたり、外部の木が少しずつ色褪せていったりすることまで、すべて「劣化」と考える必要もないと思っています。

時間とともに変化することを受け入れながら、必要なところに少しずつ手を入れる。

そうやって長く使い続けられることも、ひとつの耐久性ではないでしょうか。

本当は、こうした考え方を住宅の仕様にも、できるだけ一貫して反映していきたいと思っています。

長く使えて、傷んだところを直せて、できるだけ大掛かりな工事をせずに維持していけるもの。

そんな材料やつくり方で、家全体を組み立てられれば理想的です。

ただ、実際の家づくりはそれほど単純でもありません。

価格のこと。
性能のこと。
施工性や保証。
職人さんの技術。
将来も同じように修理できるのか。
そして、お施主様それぞれの好みや暮らし方。

いろいろな条件を考えると、すべてを一つの考え方だけで統一するのは難しいのが現実です。

メンテナンス性を優先した結果、初期費用が大きくなりすぎてもいけません。

一方で、今の価格だけを優先して、将来大きな修繕費が必要になる仕様を選ぶことにも慎重でありたい。

「自然素材だから良い」
「工業製品だから悪い」
「ノーメンテだから良い」

そんなふうに簡単に分けられるものでもないと思います。

だからこそ、今一度考えてみたいと思っています。

自分たちは、住宅の寿命とメンテナンスについてどう考えるのか。

何年持つのか。

どんな手入れが必要なのか。

その手入れは誰ができるのか。

どのくらい費用がかかるのか。

部分的に直せるのか、それとも全体を交換しなければならないのか。

そして、古くなったときに、それを「劣化」と感じるのか、「味わい」として受け入れられるのか。

家は、完成した瞬間が一番新しく、その日から少しずつ変化していきます。

その変化をできるだけ止めることだけを目指すのではなく、

変化しながらも、手を入れ、直し、長く使い続けられる家。

そんな家をどうつくっていくのか。

私自身も、まだ答えを出し切れているわけではありません。

だからこそ、「ノーメンテ」という耳触りの良い言葉だけで終わらせず、その家を20年、30年、その先までどう維持していくのか。

「ロングライフ」という言葉の意味も含めて、今一度考えていきたいと思っています。

資料請求はこちら