こんにちは。
設計の田中 桂です。
関西も梅雨入りし、ここ数日は雨模様が続いていますね。
現場の進捗にも影響が出るため、天気予報をこまめにチェックする日々が続きそうです。
さて、私たちが住宅を設計するうえで、最初に何を考えるのか。
もちろん、住まい手のご要望やご予算は非常に大切です。
ですが、それよりもまず重視するべきことがあります。
それは、「土地を読むこと」です。
建築というものは、言うまでもなく“土地”があって初めて成り立つものです。
その敷地の持つ特徴や条件を丁寧に読み取り、最もふさわしい形で建物を計画していく。設計とは、その土地との対話から始まるものだと、私たちは考えています。
たとえば──
- その場所はかつてどのような地形・用途だったのか?
- 周囲にはどのような建物があり、将来的にはどう変化しそうか?
- どこからの景色を室内に取り込みたいか?
- 地域特有の風の通り道はどこか?
- 日射や気温はどのように変化するか?
こうした自然環境や周辺状況、つまり“敷地が持つ情報”をきちんと読み解くことが、良い設計へとつながります。
学生時代、大学の先生に教わった「建築は土地に生えるもの」という言葉が、今も心に残っています。
その言葉のとおり、敷地の情報を読み解いていくことで、建築のかたちは自然と導かれてくる――
そんな設計が理想だと思います。
もちろん実際の設計には、ご要望やコスト、法規制といった多くの要素が絡んできます。
そう簡単にはいかない現実もありますが、設計の根っこにあるべき意識として、今も大切にしています。
気候や日照といった物理的な要素と、景色や素材感といった感性的な要素――
それらをバランスよく組み合わせることは、簡単なようでいて実はとても難しいと、日々感じています。
それでも、土地を無視して建てられた建物には、やはりどこか違和感が残るもの。
これからも「土地を読む力」を磨きながら、ひとつひとつ丁寧に設計を進めていきたいと思います。